檸檬

生きるための生活をしています

新世界

苺の種みたいに君を噛み砕きたくなる夜とか珈琲みたいに苦くて目を瞑っちゃう恋とかパスタみたいに伸びてしまった時とか、もうそういうのさえ許せなくなってしまう私がいる。

涙を流せば流すほど綺麗になるという迷信は明後日の方向で飛んで行き、今は遠くの地域で優しく優しく撫でられている。涙なんか綺麗なものじゃなくて、涙を流した事実も綺麗になるカンフル剤なんかじゃない。泣き顔が好きだった男の性癖が勝手に付けたそれでしか無いに決まってる。きっとそう、そうじゃないと困るから。

 

今頃絶世の美女になれるぐらい泣いたはずなのに、私が美女になれない理由というのは周りが私よりもっと泣いているから、

泣くと目が霞んで視界はどんどん悪くなる一方見なくていいものを見る必要が無くなるのかもしれない。鴉は今日も世界の哀愁漂うドラマをカァカァと鳴きながら悠然と見下ろしている。